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バックキャスティングとはスウェーデンの環境NGOであるナチュラル・ステップの創始者であるカール・ヘンリク・ロベールという人物が提唱している考え方である。これは将来社会の予測に際して適用されるものである。将来社会の予測方法として、バックキャスティングに加えてフォアキャスティングという考え方がある。フォアキャスティングとは、過去の趨勢をベースとして過去の伸びを将来に適用して引き伸ばして将来を予測する方法である。経済見通しや、交通需要予測などを行う場合、このフォアキャスティングという予測手法が一般に取られてきた。フォアキャスティングは、将来において経済社会上の大きな構造変化が生じない、言い換えれば不連続な変化が生じないという前提が妥当する場合には適当な予測手法である。
しかしながら、将来の社会経済活動を支える地球環境に大変動が予測されるような場合、過去の趨勢を将来に伸ばすようなかたちで将来像を描くと、それは破局を描くことになるおそれがある。たとえば、地球温暖化問題において、過去の趨勢でいくと30年後には温暖化による異常気象の発生で、深刻な食糧難が想定されるかもしれない。そのような破局現象が予想されるような場合、将来の持続可能な社会の姿を想定し、そこをベースとして現在を振り返り、想定され得る破局の回避のために、現在の段階からどのような取り組みが必要かを考えて対策を採用する。即ち将来から現在を振り返る。それで、将来破局に陥らないために現在何をしていけばいいのかを考える将来予測、それがバックキャスティングの考え方である。このような方法は目標設定型の将来予測とも言うものであり、政策指向の強い考え方である。
バックキャスティングは環境問題の観点から言えば、OECDが1990年代前半から検討を進めている環境保全型交通体系(EST:Environmentally
Sustainable Transport)のあり方の中で適用している考え方である。すなわち、運輸部門から排出される2030年の地球温暖化ガスの排出許容値を目標値として定め、その水準の達成のために今から何をすべきか、といった観点から交通環境施策を打ち出していくというアプローチである。
このようなアプローチは、トレンドの延長線でものを見て行こうという、ある意味では現状追認に陥りがちな政策立案に対して、明確に目標を定めてそこに向かって進みかつ進捗を逐次チェックしていくというアプローチである。従って、政策の将来ビジョンをどこまでクリアに描けるかがこのアプローチのかなめであり、政策立案者の力量もそこにかかっている。今後の我が国の環境政策の将来ビジョンを議論する上では、バックキャスティングアプローチは有効なツールとして評価できると言えよう。
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