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企業と社会のコミュニケーション

2003.09.10 
社会環境システム部 阿部 祐子 

 企業の社会責任(CSR:Corporate Social Responsibility)への社会的関心が高まっている。現在、国や地域が社会経済と環境のバランスを自ら選択し、持続可能性を高めていくことが求められているのと同様に、企業においても、経済・環境・社会の3つの側面(トリプル・ボトムライン)のバランスのとれた経営を行い、持続可能な社会づくりに寄与していくことが求められている。

 このような考え方が急速に広まった背景として、以下のようなことがあげられる。
(1) グローバリゼーションの拡大によって、企業活動の及ぼす影響の範囲が急速に大きくなり、社会的関心も高まっている。利益追求のみでなく、企業活動が社会に対して意義ある存在であることを国際社会全体に示すことが必要となっている。
(2) 原料採取、製造、流通、販売・サービス、廃棄等々の企業活動において、多様な地域との利害関係が生じるようになっている。各地の地域事情を考慮しながら、その健全な発展に配慮し、相互理解を求めていくことの重要性が高まっている。
(3) 情報通信技術の普及等によって、消費者は企業に関するより詳細な情報を得ることができ、それは瞬時に世界中に伝達される。社会責任のマネジメントの甘さからブランドイメージを一瞬にして大きく傷つけることも可能となり、公開情報の透明性・正確性とともに、水準の高い企業統治が必要となっている。

 このような社会的関心の高まりを受けて、ヨーロッパ諸国では、財務報告書に加え、環境報告書、社会報告書(法遵守、雇用の安定、差別撤廃、地域融和等の報告)を企業に義務づける国が増えており、また、国際標準の検討もなされている。わが国においても、企業の格付けや公的資金投資先選定基準として企業の環境面・社会面の活動を考慮する例がみられる。国際社会において、その存在意義を多くの人が認め、支持することが、企業の持続可能性を決定する時代となっている。

 そのような中、企業と社会とのコミュニケーションの重要性が増している。環境面、社会面で技術的・制度的対応を図ることも重要であるが、そのような活動が適切に理解され、社会と企業の間に信頼感を生まれることがより重要となる。そこに大きなビジネスチャンスが生まれるともいえる。

 欧米企業では、情報公開による透明性の確保とともに、多様な利害関係者から企業経営への提案を募るなど、対話型コミュニケーションを積極的に進める例が多くみられる。また、NPO等との連携による地域への浸透、社外の人々の意見をふまえた企業の将来像提示など、企業と社会の未来の共有を図ることで、社会の中での存在を大きくしようとしている。

 わが国の企業は、社会的責務への認識・対策は高い水準を維持していると考えるが、国際社会での存在のアピール、信用力の獲得という面での活動が少ないように感じられる。情報公開による透明性の確保、多様な利害関係者とのコミュニケーションによる価値観の共有、地域との対話による理解促進など、自らの存在価値を高めるための長期的戦略が今後の課題であると考える。

当コラムの見解は、必ずしも当社の公式見解を代表致しません。

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