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◆バイオテロとは
バイオテロ(bioterrorism)とは、ウイルスや細菌、真菌等、ヒトに害を及ぼす病原体、及びそこからの毒素等(以下病原体等)を用い、無差別に大量のヒトを殺傷しようとする行為を呼ぶ。
バイオテロに用いられる病原体等としては、さまざまなものが挙げられる。例えばWHOではバイオテロに使用される可能性のあるものとして、炭疽菌のほかに天然痘ウイルス、ペスト菌、ボツリヌス菌毒素等を挙げている。
こうした病原体等によるテロの手段としては、水道水をはじめとする飲食物への混入や、空中での散布、ミサイルでの散布、あるいは病原体に感染したヒト・動物等を紛れ込ませる等が存在する。アメリカの炭疽菌事件のような、郵便物中への混入を通じ、散布・吸入を図るという事例もある。
◆社会的現象としてのバイオテロ
バイオテロは、2001年10月に生じた米国における炭疽菌による事件(同年12月中旬迄に死亡 5/ 患者22)をきっかけに注目されるようになったが、オウム真理教もサリン事件に先立ち、ボツリヌス毒素や炭疽菌を散布するテロを実施したとされている。
現在、我が国で「バイオテロ」という言葉が市民権を得ているかどうかは判断の分かれるところであるが、米国では前掲したオウム事件等をふまえ、米国厚生省のCDC(Centers for Disease Control and Prevention)にバイオテロ対策部門が1998年に設置された頃から一般的な用語となったとされる。
ちなみに、我が国での新聞主要四紙の記事での登場件数を見ると、1990年〜1999年までの10年間ではゼロ件、2000年も2件という状況が、米国の炭疽菌による事件の生じた2001年には187件となっている(その後、2002年は74件、2003年は62件で推移している)。
◆バイオテロの特徴
バイオテロに利用される生物兵器(Bio-)は、核兵器(Nuclear-)や化学兵器(Chemical-)と並び、NBC兵器と呼ばれているが、その中でもテロリストにとっては大きな利点を持っていると言われている。すなわち、@安価で製造できる、A設備・知識面で容易に製造可能である、A目に見えないため、秘密裏に散布できるとともに、恐怖感を与えるB管理や持ち運びが容易である、Cテロリスト自身は事前に予防措置が可能である、D効果に時間がかかるので逃亡する時間がある、E候補が大きく、対策を立てにくく、かつ、対応にも時間がかかる、等である。
なかでも@Aの点は極めて重要であり、例えば@については文献によれば、核兵器を用いて敵側の人間を殺すには2,000ドルの費用がかかるのに対し、サリンなどの化学兵器を使った場合は一人当たり200ドルで済むと言われているが、これに対し、生物兵器の場合、1ドルで済むと言われている。生物兵器が貧者の核兵器と呼ばれているゆえんである。
また、Aについては、オウムの中には生物兵器関連分野の専門教育を受けた人間がいなかったのにも係わらず、大量のボツリヌス菌や炭疽菌を増やしている。つまり、専門家でなくとも、微生物学の教科書等、見よう見まねで生物兵器を製造できることになる。
◆バイオテロへの対応
バイオテロへの近年での対応について、米国では1998年に前掲の厚生省CDCバイオテロ対策部門が設置された他、2003年12月12日にはいわゆる「バイオテロ法(注1)」に基づく規則(食品施設の登録及び輸入食品出荷に関する事前通告)が施行となった。後者は、規則に基づいた米国政府への登録がされていない施設で製造された食品や、政府に対する事前通告が行われていない小包などは、米国到着後差し止められる可能性があるなど、米国一国に留まらない大きな影響を及ぼすことが想定されている。
これに対し、我が国でも、2001年の米国での事件を契機にバイオテロなどの大規模感染症が生じた場合における厚生労働省の対応について検討が行われ、2002年4月に報告書がとりまとめられた他、同年のワールドカップ開催期間中には各種の体制を組むなどの対応がなされているが、社会全体の仕組みとしての対応にはなっていない。
さらに、診断、あるいは基礎研究の体制に関しても、「アメリカ政府はオウム真理教の事件での日本政府の対応を手緩いと受け止め、さらに病原体の管理に対する国のガイドラインもないことから、日本をテロ容認国家であると見なすようになった。そのため、サリン事件以後、このようなサンプル(エボラなどのウィルス)は分与されていない(注2)」など、安全・安心な社会の実現に向け、さらに踏み込んだ対応が必要であろう。
注1)Public Health Security and Bioterrorism Preparedness and Response Act of 2002
注2)山内一也・三瀬勝利(2003):『忍び寄るバイオテロ(NHKブックス961)』による
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